[第7回]

グリーンランド美味礼讃[後編]

(2016年11月11日 掲載)
5月初旬だというのにすっかり融けてしまったグリーンランド北部の海:阿部雅龍撮影

 シオラパルクに住む日本人ハンターの大島育雄さんは、血が滴るアザラシの生肉を僕に差し出した。つい30分ほど前までは海を自由に泳いでいたアザラシである。新鮮なのは言うまでもない。腹がさばかれて肉塊となったアザラシには、まだほのかな温もりがある。大島さんは生肉をブロック状に切り取って渡してくれる。透明なビニール袋に肉を入れると、袋の底に血が溜まった。

 手袋のままで生肉を触ると血まみれになって染み込み、低温の環境で即座に凍ってしまう。素手でつかみ、ナイフで一口大の大きさに切り取って口の中に放り込む。肉の色は赤というより黒に近い。短い時間でも肉は凍り始めており、シャリシャリした食感が心地良い。この時、アザラシの分厚い脂肪も一緒に食べるとなお良い。脂肪に味はないがカロリーが高く噛みごたえがあるので満腹感も増す。僕は特に血が大好きで、指についた血は全てなめていた。