[第4回]

無言のサムズアップ

(2016年8月19日 掲載)
救助のヘリをソリの中で待つ(グリーンランド北西部):阿部雅龍撮影

 太陽が地平線の下に消えた。夜が来る。マイナス30℃の夜が。

 北極の海から這い上がった後なので、身体は低体温症気味、ずぶ濡れ、軽量化のために予備の着替えなし、残りの水は1リットル、テントも石油コンロもない。

 暖かい日差しが水平線に消えると、何とも不気味な夜がきた。体調と装備がしっかりしているとき、北極の夜は美しいものである。しかしそれらがないと人間はわずかな時間も生きていくことが許されない。恐怖を感じるが、恐れていても何も変わらない。何とかしてこの夜を越さなければ。今の自分に何ができるか。