選考経過

(2021年11月3日 付)
最終選考に残った5編を審査する(左から)高橋さん、西木さん、諸田さん=東京・銀座

 今回は昨年より29編多い252編の応募があった。都道府県別では東京40編、神奈川22編、埼玉15編、本県と愛知が9編。海外からも2編あった。応募者は年代別で60、70代が各68人で最多。50代37人、40代30人と続いた。

 最終選考に残ったのは応募順に「ロング・ヘアー」「烏の櫛」「転がるバレル」「外の目」「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」の5編。審査では「転がるバレル」が最高点となり、「烏の櫛」が続いた。

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 入選となった「転がるバレル」は、大学入学後にバーでアルバイトを始めた女子学生が、バーのマスターや客との触れ合いを通して成長していく物語。決まった時間、曜日に訪れる常連に、初めて来訪する客。その注文から見える客の心の機微にもスポットを当てた。

 西木正明さんは「短編を集めた印象を持ったが、最終選考に残った作品ではこれがベスト」、諸田玲子さんは「随所に才気を感じた。表現が独創的。人間を鋭く見ている。もっと書けば伸びるのではないか」と高く評価した。高橋千劔破さんは「お酒の物知りエッセーの趣はあるが、今回の応募作品の中では一番内容が濃い」とし、「文章として余分な箇所もあり、削るともっと良くなる」と述べた。

 選奨の「烏の櫛」は、江戸時代の城下町が舞台。くし職人の男性が仕事や夫婦関係がうまくいかず、行きつけの店の女性と関係を持つようになるが、その後の出来事から人生を見直していくさまを描いた。

 審査員からは「言葉遣いのおかしい所はあるが、全体的にはよく書けている」「じっくり調べた自分の言葉で伝えようとしているのは分かる。ただ、作品を良く書こうとし過ぎて硬い印象を受けた」との意見があった。

 選外3編のうち、「ロング・ヘアー」は、秘密の力を授かった親子の物語。「最初は興味を持って読んだが、旧約聖書をなぞった印象」「全体的に日本語の使い方が適切ではなかった」との声が上がった。

 「外の目」は婚活アプリの活用を巡る人間模様に焦点を当てた。「面白かった」とされる一方、「物語というよりエッセーのよう」とされた。

 「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」は、新型コロナウイルス下の苦境を描いた。「一生懸命に書こうとしているのは伝わってきた」「起承転結がなかった」との指摘があった。