[入選]

村雲菜月さん「転がるバレル」 執筆挑戦1年、受賞驚く

(2021年11月3日 付)
入選の喜びを語る村雲さん

 昨年7月に小説執筆の挑戦を始めてから1年余り。5作目となる作品で入選に輝いた。最高賞の受賞に「びっくりしました」と目を丸くする。

 北海道帯広市出身。道内の高校時代は油絵に取り組み、金沢美術工芸大(金沢市)へ進学後はグラフィックデザインを学んだ。現在は都内の会社に勤め、雑貨の商品企画を担当している。

 それまで文学作品の執筆経験はなかったが、新型コロナウイルスの感染拡大が転機となった。昨年4月以降、緊急事態宣言の発令で外出自粛が求められ、休日は自宅で過ごす時間が長くなった。映画鑑賞や読書をするうち、新たな創作意欲が湧いてきた。「今まではストーリーが絡むものづくりをしたことがなかった。違うことをやってみよう」

 7月に物語を紡ぐ挑戦を始めると、作品はひとまず完成に至った。ただ、内容が面白いのかどうかが分からない。10月から元文芸編集者が講師を務めるカルチャースクールに通い、指導を受けてきた。現代を舞台にした作品を書いていると、「自分が体験したことから書いてみるといい」と助言された。

 そこで思い出したのが、バーでアルバイトをしていた大学時代。こぢんまりとした店内にはさまざまな人が訪れ、会話が交わされていた。「人や言葉の混ざり合う様子は、まるで酒だるの中のようだ」と思い起こした。英語でたるを意味する「バレル」をタイトルに用い、「転がるバレル」を書き進めた。

 物語は、主人公の女子学生が個性的な客と出会い、成長を遂げていく。その随所にはウイスキーの種類や味わいも盛り込まれている。筆者自身が好きなお酒でもあり、「読んだ人がウイスキーを味わった気分になったり、バーに行ってみたいと思ったりしてほしかった」という。

 別の作品をインターネット上で展開する文学コンテストに応募したことはあったが、紙媒体への作品応募は今回が初めて。それだけに最高賞受賞は驚きも、喜びもひときわ大きい。

 小説はこれからも仕事の傍ら書いていくつもりだ。「今は書くのが楽しい。身近な人に読んで楽しんでもらえる作品を書いていきたい」と笑顔で語った。