割り切れないのも悪くない 循環する小数の不思議【数からの挑戦状#6】★解説動画連動★
数学の世界にある、いまだに解けない問題や不思議な法則を、科学ライターの井筒智彦さんが毎月紹介します。古代から現代まで、人類が数と格闘した歴史も垣間見えます。
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割り算は好きですか?
場合によりますよね。
100÷4=25のように、割り切れるときは気分がいいです。
しかし、25÷8のように、余りが出るときは気乗りしません。
ここではあえて、小数まで割り算を続けてみましょうか。
すると、先ほどの計算は、25÷8=3・125となります。
割り算が無限に続くこともあります。実は、これが面白いのです。
よく観察すると、数の並びが繰り返していることに気づくはずです。
こうした小数を「循環小数」と言います。
小数の「繰り返し部分」の桁数が2桁や6桁などの偶数の場合、真ん中で二つに分けることができます。それらの数を足し合わせてみましょうか。
表に例を載せています。
おや? 何やら、奇妙な数が現れていますね。
割る数が「素数」のとき、足し算の結果は必ず9が並ぶそうです。それ以外では単純な法則はないそうですが、本当なのか試してみたくなります。
ちなみに素数とは、1と自分自身でしか割り切れない2以上の整数です。素数については今度じっくり取り上げましょう。
1÷7の繰り返し部分の142857には、別の特徴もあります。2から6までの数を掛けると、142857がぐるぐると並び替わるのです。
このような数を「巡回数」と言います。1を17、19、23などで割ったときの繰り返し部分も巡回数となります。
割り算が楽しくなってきたら1÷81を、元気があれば1÷9801も計算してみてください。驚きの答えが出てきますよ。
案外、割り切れないのも、悪くないですね。(文・科学ライター・井筒智彦、監修・谷口隆神戸大大学院教授)
※井筒さんが出演して、より分かりやすく解説している動画があります。YouTubeで「数からの挑戦状」と検索してみてください。
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いづつ・ともひこ 1985年東京都生まれ。東京大大学院博士課程修了。宇宙プラズマの乱流輸送現象を世界で初めて実証。米航空宇宙局(NASA)人工衛星の解析チーム入りを辞退し、広島県北広島町に移住。「限界集落から宇宙へ」を合言葉に町おこしに取り組む。
たにぐち・たかし 1977年兵庫県生まれ。東京大大学院博士課程修了。プリンストン大客員研究員などを経て神戸大大学院理学研究科数学専攻教授。専門は整数論。著書に「子どもの算数、なんでそうなる?」(岩波書店)。