社説:西武秋田店の存続 地元の期待感伝えたい

 米投資ファンドの傘下に入った百貨店「そごう・西武」が、西武秋田店(秋田市)を含む全国の店舗を当面維持する方針を固めたとされる。しかし、存続の方向性が正式に公表されたわけではなく、中長期的な先行きには不透明感も残る。西武秋田店は秋田市中心市街地で大きな存在感を持つ商業施設であり、長く存続させるためには県や市の努力も期待したい。

 そごう・西武を巡ってはこの20年ほど、曲折が続いてきた。2003年に西武百貨店とそごうグループが持ち株会社の傘下に入って経営統合し、06年にはセブン&アイ・ホールディングス(HD)が持ち株会社を子会社化。さらに09年、持ち株会社と西武百貨店、そごうが合併してそごう・西武が発足した。

 当時、そごう・西武は全国に28店舗を展開していたが、業績の低迷で不採算店舗を次々閉鎖。22年に入りセブン&アイHDは、そごう・西武の売却へ向け動き出し、今月1日、米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループへの売却が完了した。

 現時点では、そごう・西武が首都圏や秋田、福井、広島の各県に展開する計10店舗は当面維持する方針とされる。秋田店の行方に気をもんでいた県内関係者とすれば、まずは胸をなで下ろしたところだろう。

 しかし、存続方針は正式に公表されたものではない。今回の売却劇では、家電量販店大手ヨドバシホールディングスの西武池袋本店(東京都)などへの出店が焦点となり、地方店舗存続の議論はそもそも二の次となってきた感が強い。利益優先の投資ファンドが地方店の行方にどれだけ関心を払うのかは、予断を許さない。

 西武秋田店は長く市中心部の中心的な商業施設として市民、県民に親しまれてきた。経営効率化の一環として21年に3階の営業を終了し、売り場を地下1階から地上2階までの3フロアに縮小したものの、市内唯一の百貨店として、現在も街並みに欠かせぬ存在であることは間違いない。

 最近では、周辺にマンションの新規立地も相次いでおり、居住人口が増加傾向にある。中心市街地活性化という観点からも、西武秋田店が閉鎖されるような事態は避けたい。

 西武秋田店への地元の切実な期待感を投資ファンドがどれだけ理解しているかは心もとない。県や市には、店舗存続を求める地元の思いを何らかの形で経営側に訴えかける手だてを考えてもらいたい。

 国内資本と違い、海外の投資ファンドが相手とあっては、そうした働きかけも簡単なものではないかもしれない。しかし、手をこまねいている間に大勢が決してしまう恐れもある。秋田市の「顔」である中心市街地の将来を左右しかねない重大な局面と捉え、打つべき手を打つよう期待する。

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