東海林太郎が直立不動の姿勢で歌唱するのは、燕尾(えんび)服と同じでクラシックの精神を示していたからである。そこに剣豪の宮本武蔵の精神が加わるのは、1964(昭和39)年6月に3度目の直腸がんの手術で東京の虎の門病院に入院したときであった。
◇ ◇
病院のベッドに寝ていていろいろのことを考えていたら、宮本武蔵の「一剣護民」(剣で民を守る)という言葉が浮かんできた。東海林は早稲田大学を卒業して南満州鉄道株式会社に勤務していた頃、「仕事よりも宮本武蔵にとりつかれて、むさぼるように武蔵についての本を読みふけっていた」という。30年振りにその内容を思い出し、武蔵が剣ならば、自分は歌であり、「人間完成のための修行」であると感じた(「文藝春秋」66年3月号)。
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