時代を語る・銭谷眞美(1)国会答弁、成長の糧に
元文部科学事務次官の銭谷眞美さん(73)に歩みを振り返ってもらいます。
◇ ◇
平成21(2009)年まで文部科学省に36年余り勤め、昨年まで東京国立博物館の館長でした。いまは新国立劇場運営財団の理事長をしています。
文科省時代は教育行政に携わり、学習指導要領の改定や教育基本法などの法改正に関わりました。仕事は常にチームで取り組んできました。最後に事務方トップの事務次官に就けたのは、上司や仲間に恵まれたおかげです。
文科省の頃は本当に忙しかったです。特に国会開会中は、日中は国会の委員会審議や審議会の会議、夜は翌日の国会答弁の作成をしていました。繁忙を極めた頃は仕事が終わるのが明け方という日が続きました。
国会の委員会は議案や請願などを細かく審査する場です。委員である議員の質問には基本的に大臣が答弁するのですが、官僚も政府参考人として説明できます。私も何度も答弁に立ちました。
発言は議事録に残りますから緊張しますね。何十年もたってから引用されることもあります。議員から「あのときにこういう答弁をしているが、今はどうなっているのか」「以前の答弁と相反する」といった指摘もあります。ですから間違ったことは言えません。
先輩に「答弁というのは、やります、やりません、検討しますの3通りしかない」と言う人がいました。極論ですけどね。でも、最終的な答えが3通りしかないとしても、どう答えるのかは慎重に判断しなければなりません。
国会で議員の質問に答えるのは、議員を通じて国民の思いに答えることになります。責任は重いです。大変緊張しましたし、いい勉強になりました。自分を鍛え、育ててくれたと思っています。
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