【ぷらっとTOKYO】「渋谷」 変貌の街で息づく歴史

※写真クリックで拡大表示します
「名曲喫茶ライオン」店内=東京都渋谷区
「名曲喫茶ライオン」店内=東京都渋谷区

 再開発が進み、高層ビルが次々と建設されるトレンドの発信地、東京・渋谷。目まぐるしく姿を変える街で歴史を伝える場所を訪ねた。(共同通信=中井陽)

 JR渋谷駅前のスクランブル交差点は外国人観光客に人気の眺めだ。複合ビル「渋谷フクラス」17階からは、人々が群れを成すように行き交う様子が見られる。

 交差点前の広場では外国人が長い列を作り、何かを囲んで写真撮影中だった。人気者は忠犬ハチ公像。モデルとなった秋田犬のハチは今年生誕100年だ。日々、駅まで送迎した飼い主の急逝後も、駅前で待ち続けた姿は人々の胸を打ち、1934年に銅像が設置された。戦時中に取り壊されたが48年に再建。1匹の犬が、信頼や愛を表す街の象徴になっている。

 最近、ハチ公をモチーフにしたアート作品が、商業施設屋上の渋谷区立宮下公園に設置された。

 道玄坂を上っていくと、大阪から上京しこの辺りに住んでいた歌人与謝野晶子の歌碑がある。鉄幹との新婚生活の合間に、坂の上から西に連なる山々を眺め、故郷を懐かしんだという。

 坂から通りを入った所に、風格ある建物がたたずむ。26年から続く「名曲喫茶ライオン」だ。壁一面を覆うスピーカーから、クラシック音楽が流れる。高い天井から下がるシャンデリアや金色の柱を見ると、タイムスリップした気分になる。

 「創業者がバロック建築に興味があった。古い建物なので維持が大変ですが、ここでしか聴けない曲があると、お客さんが来てくれます」と渋谷生まれで店の運営を担う山寺直弥さん(61)。スピーカーの前で指揮の練習をする学生もいたという。歌手の宇多田ヒカルさんら著名人にもファンが多い。

 散歩の締めくくりは区立鍋島松濤公園へ。紀伊徳川家の下屋敷だったが、明治の頃に茶園となり、一部が湧水池のある緑豊かな公園になった。

 【メモ】「名曲喫茶ライオン」は午後3時と7時に店の選曲によるレコードなどでの「コンサート」を開催。

お気に入りに登録
シェアする

秋田魁新報(紙の新聞)は購読中ですか

紙の新聞を購読中です

秋田魁新報を定期購読中なら、新聞併読コース(新聞購読料のみ)がお得です。

新聞は購読していません

購読してなくてもウェブコースに登録すると、記事を読むことができます。

同じジャンルのニュース