東海林太郎は子供の頃から純文学に接してきた。学生時代に好んで読んだのが夏目漱石の作品であった。コロムビアレコード所属の霧島昇は、1942(昭和17)年に文芸歌謡「我輩は猫である」を歌っているが、東海林は漱石作品を吹き込む機会に恵まれなかった。
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東海林が日本調の中でも最高の作品だと評価した「すみだ川」と「高瀬舟」も文芸歌謡の代表作である。
このカップリングは37(昭和12)年1月、東海林のポリドール専属3周年記念として作られた。一人の歌手で両面を組むのは特別なことであった。というのも当時のレコードは表面と裏面とで歌手が違った。これは戦後に比べ蓄音機とレコードが高価だったため、それぞれのファンに買わせるレコード会社の戦略であったと考えられる。「すみだ川」の間奏部分では、当時人気の松竹映画の女優田中絹代が台詞(せりふ)を入れている。
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