社説:農業産出額低水準 「複合型」への転換急げ

 本県の2021年農業産出額が9年連続で東北最下位となった。全国順位も前年より一つ下げて19位。生産構造が稲作に偏り、米価下落が大きく響いた形だ。低水準が続く状況から脱するには、コメの付加価値を高めつつ、収益性の高い畜産や野菜の生産を広げる「複合型」構造への転換が欠かせない。

 農林水産省によると、産出額は前年比12・6%(240億円)減の1658億円で、東北1位の青森県とは1619億円の開きがあった。隣県のほぼ半分にとどまった状況を深刻に受け止めなくてはならない。前年比で1割以上の大幅減となったのも、東北では本県のみだった。

 県は「コメの概算金が下がった影響で、稲作の比率が高い本県は産出額が下がった」と分析する。産出額に占めるコメの割合は他の東北各県が10~30%台なのに対し、本県は52・8%と高止まりの状態が続く。農業の体質改善を図らない限り、低水準から脱するのは難しい。

 1960年時点でコメが産出額トップだったのは、本県を含む43道府県。現在は8県にとどまり、それ以外は畜産や野菜、果実が主力となった。食生活の変化や人口減少などを背景に主食用米の国内需要が毎年10万トン前後のペースで減り、コメ産地が次々と作付け転換を進めたためだ。

 本県の産出額は米価下落のあおりを受け、91年からの30年間で1066億円減った。需要の変化に応じた取り組みは急務と言える。

 県は昨年3月策定の「農林水産ビジョン」で、2025年に産出額2千億円到達を目指すとしている。その方策として▽園芸や畜産の大規模生産拠点の整備▽エダマメやネギ、シイタケなどの出荷量日本一の産地づくり▽秋田牛や比内地鶏のブランド力強化▽果樹・花卉(かき)のオリジナル品種の開発―などを挙げる。スピード感を持ってこれらを進め、複合化を急ぐべきだ。

 同時にコメの付加価値を高める取り組みも欠かせない。昨年本格デビューした新品種米「サキホコレ」は県産米の価格を底上げする起爆剤として期待されている。

 県は先ごろ、サキホコレを25年産以降は全て農薬や化学肥料の使用を減らした「特別栽培」にすると打ち出した。全国にインパクトを与える発信であり、トップブランドへの仲間入りを果たす上で有効な戦略を示したと言えよう。

 本県は「農業県」を標榜(ひょうぼう)してきたが、担い手が高齢化し、労働力不足は深刻だ。若い世代に農業の醍醐味(だいごみ)を伝える上でも産出額や農家所得の向上を図る取り組みは欠かせない。環境配慮型の栽培やデジタル技術を活用したスマート農業などの仕組みも全国に先駆けて確立し、本県農業の将来像を示したいところだ。持続可能な農業を実践する先進県に生まれ変われるかが問われている。

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