北斗星(12月20日付)

 闘病中だった八峰町の森田新一郎町長が10日に他界した。少子化が進む町の行く末を案じつつ、ひときわ期待を寄せていたのが地元漁師たちが挑むサーモン養殖だった。「元気な芽が出ている」と楽しみにしていたが、軌道に乗るのを見届けられず無念だったに違いない

▼養殖事業は昨冬始まったばかり。20~30代が中心となって株式会社を立ち上げ、稚魚500匹を購入。今年5月には重さ3キロほどにまで育ち、8割以上を出荷するのに成功した。1キロ当たり2千円超の高値が付き、上々の滑り出しだった

▼冬に海が荒れる本県沿岸では魚の養殖が難しいとされてきたが、波の穏やかな岩館漁港内にいけすを設置しハードルをクリア。今季は規模を広げ千匹を育てる計画だ。若手の思い切りの良さとやる気には目を見張らされる

▼新たな一歩を踏み出す背景には漁師の収入の不安定さがあった。主力魚種のハタハタは不漁続きで、県内の漁師はここ20年で半減。「稼ぎが増えず、魅力が持てないままでは後継者がいなくなる」と危機感を抱いたという

▼県や町などもサーモン養殖の規模拡大を後押ししようと協定を締結。今後、既存の防波堤を200メートル延長し、いけすを設置できるエリアを拡大する。漁師育成や加工品開発にも取り組む方針だ

▼若手漁師たちの行動力が行政も巻き込んだということだろう。2033年度までに年間300トンの水揚げを目指す。「元気な芽」が花開き、地域を変える「実」を付けそうだ。

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