北斗星(12月7日付)
サッカー元日本代表監督のイビチャ・オシムさんが今年5月、80歳で亡くなった。民族紛争に翻弄(ほんろう)された旧ユーゴスラビアの最後の代表監督でもあった。「走り過ぎて死ぬことはない」「頭を使え」などと選手に求め続けた
▼その精神は日本だけでなく、旧ユーゴから独立したクロアチアにも脈々と受け継がれている。独特のサッカー観、人生観から数々の名言を残しており、「PKはくじ引きみたいなもの」という言葉もある
▼勝負は時に残酷だ。時間内に決しない場合は無理にでも白黒をつけなくてはならない。ワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本は前回準優勝のクロアチアに1―1からのPK戦で敗れた
▼前半に先制しただけに、堅い守りで逃げ切れなかったのかという思いは残る。とはいえ優勝経験があるドイツ、スペインを撃破し世界に衝撃を与えた。目標とした初の8強入りはならなかったが、日本サッカー史にさんぜんと輝く戦いだった
▼2大会連続16強は初めて。クロアチア戦は互角の内容だった。これはこれで十分に「新しい景色」だったといえるだろう。オシムさんは「くじ運が悪かった」と言ってくれるに違いない
▼W杯初出場を逃した1993年の「ドーハの悲劇」から29年。日本代表は欧州でプレーする選手がほとんどで、世界を相手に臆することなく戦っている。4年後はさらに選手が進化しているはず。夢の続きが今から楽しみになる。8強以上のまだ見ぬ景色まであと一歩だ。
お気に入りに登録
シェアする
関連ニュース
秋田魁新報電子号外
- 【電子号外】サッカーW杯:日本、8強ならず クロアチアに屈す
- 2022年12月6日発行