社説:サイバー攻撃対策 医療機関の被害防止を

 身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウエア」のサイバー攻撃により、国内で医療機関の被害が近年相次いでいる。都市の拠点病院や地方の公立病院などで電子カルテが閲覧できなくなり、診療に支障が出た。地域住民の命と健康を守るため、医療機関は危機感を持って対策を講じてほしい。

 医療機関のランサムウエア被害は、情報システムがウイルスに感染することで電子カルテが暗号化され閲覧できなくなる。攻撃者からは復元と引き換えに金銭を要求される。今年だけで少なくとも全国で11件確認されている。

 患者の治療や手術に必要な情報を記したカルテは医療に欠かせない。これを身代金の対象にすることは、患者の命を脅かす極めて卑劣な行為だ。

 昨年10月に被害に遭った徳島県つるぎ町立半田病院では、約8万5千人分の電子カルテが使えなくなった。職員が患者からの聞き取りで紙のカルテを作成し直した。一部診療科で新規患者受け入れを中止。町は都内のIT業者に7千万円を支払い、復旧を依頼した。通常診療に戻るまで約2カ月かかった。

 先月には大阪市の大阪急性期・総合医療センターも被害を受け、完全復旧は来年1月の見込みだ。センターのシステムと接続している給食委託業者のシステムを経由しウイルスが侵入した可能性が高い。業者のセキュリティー機器は半田病院と同一で、ソフトウエアが更新されていなかった。

 半田病院の被害については、ロシア拠点のハッカー犯罪集団が攻撃したと主張している。捜査当局は海外の機関と連携し、摘発に全力を挙げるべきだ。

 その一方で、世界ではさまざまなコンピューターウイルスが生まれている。医療機関に限らず、デジタル化社会では誰でもサイバー攻撃に遭う恐れがあるという危機感を持って、対応しなければならない。

 厚生労働省は今年3月、医療機関の情報セキュリティーに関する指針を改定した。新たにランサムウエア対策を明記し、電子カルテなどのバックアップデータを病院のネットワークから切り離して保管することなどを求めている。

 全国の病院団体でつくる協議会が1、2月に実施した調査では、電子カルテなどのシステムに障害が生じても診療を継続できる態勢がある病院は3割にとどまった。協議会は厚労相に対策への公的補助金の支給を提言している。

 年度内には、厚労省の主導で対策情報を収集、共有する組織が設立される。日本医師会や製薬、医療機器メーカーの業界団体も参加。被害を受けた病院の復旧支援にも当たる。

 医療機関にとって対策や復旧などの対応は経済的負担が大きい。地域医療というインフラを守るためにも、財政面を含めた行政からの支援も必要だろう。

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