北斗星(11月29日付)

 「隣り合った二つの自然数の積は必ず偶数」。大学生向けの数学書に赤ペンでびっしりと書き込みがある。中ほどの数ページが乱暴に引き裂かれているのは昭和を代表する作詞家の自伝的小説だ

▼秋田市の県立図書館の貸し出しカウンターの近くで痛々しい姿の本の数々に目が留まった。「本からの訴え! わたしたちを大切に扱って!」という展示コーナー。破られ、ぬらされ、汚された書籍や雑誌が無残な姿をさらしている

▼破損や汚損により除籍される本は毎年50冊ほど。利用者にマナー向上を呼びかけるため年末までの予定で展示している。「収蔵している本は県民共有の財産。残念な現実を広く知ってもらいたい」と担当者は言う

▼2017年には学校史や記念誌などが切り取られる被害が全国の図書館で相次いで見つかった。県立図書館でも、小学校の閉校記念誌から卒業生の集合写真と名簿が載った10ページが切り取られる被害があった

▼日本図書館協会(東京)は当時、「人々の共有財産として大切に扱っていただき、(中略)その財産を後世の人々に伝えられるよう、心からお願いいたします」とする声明を出した。担当者は「図書館は性善説で運営されている面がある。こうした被害をゼロにするのはなかなか難しい」と語る

▼県立図書館の展示には、おしゃれなヘアスタイルを紹介するページを破り取られた雑誌もあった。みんなで読むためのものを破った人は記事を見てどんな髪形を仕上げたのだろうか。

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