北斗星(11月5日付)
鹿角市の大湯環状列石と共に昨年、世界遺産に登録された北秋田市の伊勢堂岱遺跡の近くを流れる湯車(ゆぐるま)川では、今年も先月半ばごろからサケの遡上(そじょう)が始まった。発掘された土器に付着した遺物の分析結果などから、縄文時代の人々もサケを食べていたと考えられるという
▼湯車川では豊かな自然環境を守ろうと2011年から毎年、稚魚の放流が行われている。秋田市の県立博物館で開催中の企画展「秋田の縄文遺産」で「魚形文刻石(ぎょけいもんこくせき)」の拓本を見ながら、湯車川のサケに連想が及んだ
▼細い線で20~50センチほどの魚の形が刻まれた大きな石が米代川、雄物川、子吉川の上・中流域で確認されている。川を遡上するサケ・マスを描いたと推定され、サケ石とも呼ばれる。豊漁の祈りを込めたのだろうか
▼矢島町の刻石の周辺で縄文土器などを発掘し時代を特定したのは、秋田市出身で本県の民俗学の草分けでもある武藤鉄城(てつじょう)=1896~1956年=。若い頃はラグビーやスキーなどのスポーツの普及に尽力。考古学、歴史学でも幅広い研究と著述活動を行った
▼博物館「秋田の先覚記念室」ではバイタリティーあふれる武藤の生涯と功績を紹介する展示も行われている。縄文遺産展はあす6日限りとなったが、武藤に関する展示は27日まで
▼縄文時代の生活に想像を巡らせたり、先人の業績をしのんだりするのも楽しい。県内各地の魚形文刻石や縄文遺跡などを巡りながら、深まりゆく秋を満喫してみてはいかがだろうか。
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