社説:鳥インフルエンザ 今季も流行、対策徹底を
国内の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザが相次ぎ、全国的な流行への懸念が高まっている。昨季は県内でも、養鶏場では初めて2例発生した。感染回避に向けてウイルス侵入を防ぐための衛生管理を徹底するとともに、万が一発生した場合への備えに万全を期す必要がある。
今季は過去最も早く10月28日に岡山県と北海道で確認され、今月に入ってからも香川、茨城、岡山各県と続き、4日までに計5例発生した。殺処分数は計192万羽余りに達する見込みで、既に昨季の約189万羽を超えるハイペースとなっている。国外から飛来する渡り鳥が増加する季節を迎える中、各地で野鳥からのウイルス検出も報告されており、歯止めがかからない状況だ。
高病原性鳥インフルエンザは2004年に国内で79年ぶりに確認された。以後、発生が2季続くのはまれだったが、20年から今季にかけては流行が3季続く異常事態となっている。
野村哲郎農相は10月28日の会見で「本当に(国内の)どこで発生してもおかしくない」と危機感をあらわにした。本県でもいま一度、気を引き締めて対策に当たらなくてはならない。
昨季、全国1例目となったのは昨年11月10日の横手市での発生だった。4月19日には大仙市でも確認され、両市で計約14万5千羽が殺処分された。
ひとたび感染が判明すれば、拡大を食い止めるため直ちに大量の人員を投入して殺処分や埋め立て、養鶏場の消毒などが必要となる。防疫措置やその後の再建に要する労力や費用は計り知れない。
農林水産省は9月22日に防疫対策の徹底を求める通知を都道府県に発出。その後も韓国での発生などを受け、あらためて注意喚起した。一連の通知では特に▽早期発見・通報の徹底▽防鳥ネットがしっかり設置されているかの確認▽人や車両の出入り管理▽消毒―を促した。
これを受け、県は養鶏場に消石灰を一斉配布し、今月中旬までに散布するよう農家に要請。国の通知に沿って衛生管理態勢を入念に点検するよう呼びかけている。先月は職員を対象に、発生時の初動対応の手順確認を目的とした防疫演習も実施した。こうした早めの対応は、まん延防止に向けた関係機関や農家の意識を高める上で極めて有効と期待される。
昨年発生した横手市の養鶏場では、鶏舎の壁面にネズミなどの小動物が侵入できる3センチほどの穴が見つかり、国の疫学調査チームから「ウイルスが持ち込まれる可能性になり得る」との見解が示された。施設や周辺の点検、補修に関する指導を関係機関が徹底することが大切だ。
昨季は北日本を中心に5月中旬まで流行が長引いた。今季も長期戦になることを想定し、消石灰の小まめな追加散布など、でき得る対策を着実に続けていかなくてはならない。