ときめくこと。好きな人を待つような夜。詩人・最果タヒさんの連載「きょうの枕草子」②

最果さんは、秋田市文化創造館の開館記念に小野小町の歌を訳し発表。清少納言は、最果さんが「百人一首」の歌人の中で、友のように惹かれた人だと言います。そのご縁で「枕草子」の現代語訳を連載します。第2回は「第二九段 心ときめきするもの」。

最果タヒ「きょうの枕草子」②

清少納言「枕草子」
現代語訳:最果タヒ
絵:矢野恵司


【第二九段】

心ときめきするもの すずめの子飼(がひ)。ちご遊ばする所の前わたる。よきたき物たきてひとり臥(ふ)したる。唐鏡(からかがみ)のすこしくらき見たる。よき男の車とどめて案内(あない)し問はせたる。
かしら洗ひ化粧じて、かうばしうみたる衣(きぬ)など着たる。ことに見る人なき所にても、心のうちはなほいとをかし。待つ人などのある夜、雨のおと、風の吹きゆるがすも、ふとおどろかる。


●現代語訳

ときめくこと。
雀の雛を飼うこと。
赤ちゃんが遊んでるところの前をそっと通る。
すばらしいお香をたいて、ひとり横になる時間。
唐から来た鏡が、すこし曇っているのを見ること。
すてきな男の人が家の前に車を停めて、従者に何かを告げたり、聞いたりしているのを見るとき。
髪をきれいにして、お化粧をして、良い香りのする着物を着たりする。誰に見せるわけでなくても、やっぱり心はときめいている。
好きな人を待つような夜、雨の音がする、風が吹いて何かが揺れる音がする、ああ、と心が反応している。



【さいはて・たひ】詩人。最新詩集に『さっきまでは薔薇だったぼく』、『グッドモーニング』で中原中也賞、『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞、『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は映画化された。『千年後の百人一首』で百首の現代語訳で注目され、エッセイ集に『百人一首という感情』。小説・エッセイ多数。


【やの・けいじ】イラストレーター。東京芸術大学彫刻科卒業、同大学院美術解剖学研究室修了。任天堂でデザイナーとして勤務後、イラストレーターに。主な仕事に、資生堂プロモーションDM、中村佳穂シングルジャケット、劇団ロロのチラシビジュアル、三井のリハウスの広告イラストなど。

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