社説:副業・兼業人材 経営課題解決に生かせ

 県内企業で、社外の人材に副業や兼業の形で働いてもらう動きが広がりつつある。デジタル分野など専門的なノウハウを持つ人材を外部から受け入れ、経営課題の解決やプロジェクトの実現に生かす狙いだ。企業活動の継続や発展に向けた有効な手だてとして定着させたい。

 副業・兼業への関心の背景にあるのは、コロナ禍に伴うテレワークの普及や働き方改革による余暇の増加だ。本業以外で副収入を得たり地域貢献したりする働き方が首都圏などで注目され、オンラインで副業・兼業を始める人が増えている。

 一方、地方の中小企業の多くはデジタル化の遅れや販路縮小、製品開発の停滞、担い手不足といった経営課題に直面する。そのままでは事業が先細りするのは必至で、対応は急務だ。

 専門性のある人材を必要なだけ確保するのは容易ではない。そこで注目されるのが副業・兼業人材だ。高度な知識やスキルを持つその道のプロと期間限定の契約を結ぶのであれば、負担は小さくて済む。

 あきた企業活性化センター(秋田市)内の県プロフェッショナル人材戦略拠点は、大都市在住などの人材と受け入れを望む県内企業との橋渡し役を担っている。就職情報サイトを運営するリクルート(東京)と連携し、2020年からマッチング事業を手がける。これまでに32件の成約に至った。

 印刷機製造の宮腰精機(大仙市)はこの事業を活用し、人工知能(AI)に精通したソニーOBと契約。世界初のAI搭載印刷機の開発を進めている。システム開発のプロの助言を得て、これまで熟練工が担ってきた水やインクの調整の自動化に成功、損紙の抑制につなげた。製品は近く完成する見通しだ。

 同社では、人材難の中でベテランの技をどう継承するかが課題となっていた。外部人材を「同じ目標を共有する仲間」として受け入れることで課題を解決。マッチング事業を有効活用した好例と言えよう。

 「自社の技術を応用して商品開発をしたい」「電子商取引(EC)で売り上げを伸ばしたい」といった思いを抱く経営者は少なくない。外部人材の視点や知見をうまく活用すれば、実現への近道となるに違いない。

 期待した効果が得られるとは限らないかもしれない。それでも、企業にとっては成長や発展のために何が欠けていたか気付くきっかけになり得るだろう。「失敗」ではなく「学び」と捉え、次につなぐ姿勢が大切だ。

 副業・兼業人材について、戦略拠点は「さまざまな課題を抱える企業にとって局面を変える『ゲームチェンジャー』になり得る」と強調する。企業が活用へ一歩を踏み出しやすくするには、マッチング事業の周知や相談体制の充実に一層力を入れる必要がある。外部人材と企業が円滑にタッグを組める環境を整え、県内に浸透させたい。

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