小田野直武愛用と伝わる画材 プルシアンブルー、秋田藩士魅了した青
本展の準備に当たって、小田野直武愛用と伝わる画材類を調査する機会に恵まれた。筆のほか、数種類の絵の具(顔料)の包みが残されていた。
気になったのは、ひときわ青い顔料の包みである。伝統的な青色顔料である群青は鉱物(藍銅鉱)を砕いたものだが、問題の包みは群青より心持ち軽く、粒子は細かなパウダー状だった。その場に居合わせた一同が「もしや」と想起したのが、「プルシアンブルー」である。

プルシアンブルーは、1704年にプロイセン(現在のドイツ)で偶然合成された青色顔料である。直武が江戸に滞在した安永年間には流通はわずかで、同時代の史料には平賀源内だけが所持していたとも伝えられるという。さらに秋田蘭画には、この貴重な青い顔料が使われていることも判明している。
そこで、この顔料の一部を東京文化財研究所に運び込み科学調査を依頼したところ、限りなくプルシアンブルーに近い、という結果を得ることができた。本展ではこの顔料も展示する。秋田藩士を魅了した西洋の青を、ぜひ会場でご覧いただきたい。
(県立近代美術館学芸主事・鈴木京)
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秋田蘭画の世界―『解体新書』から≪不忍池図≫へ―
〈終わり〉
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