北斗星(8月15日付)
「絶対内緒だよ」。子どもの頃に友達とたわいない話を秘密として共有した経験がないだろうか。名古屋市の詩人おのゆういちさんが1998年に刊行した詩集「僕は子どもの頃鳥だった」はそんな秘密から題名を得ている
▼35年秋田市生まれ。詩集には20代半ばまで暮らした本県の題材を取り上げた24編が収められている。詩集の題名となった詩「僕は―」では45年8月14日夜、米軍による土崎空襲で犠牲になった同級生を追想している
▼同級生は秘密を打ち明け合った親友。彼の死をテーマにした詩は全部で3編ある。そのうちの1編には「二百五十ポンドの黒い悪魔に直撃され/一瞬に気化したのだ」「君が死んだ半日あとに戦争は終わった」とその最期をつづっている
▼きょうは77回目の終戦記念日。土崎みなと歴史伝承館(火曜日休館)ではことしも「土崎空襲展」が開かれている。爆撃機約130機、爆弾1万2千発以上、死者250人超…。日本最後の空襲の一つといわれる土崎の惨禍を28日まで伝えている
▼さまざまな展示物の中に空襲で亡くなった小学生が着用していた学童服もある。右脇腹部分には大きな破れ。「(爆弾の)破片が貫通」と説明する一文が添えられていた
▼空襲の犠牲者には兵士もいれば市民もいた。市民の中には高齢者や女性、子どもも。親にみとられ、あるいは家族と共に。亡くなり方も一様ではなかっただろう。詩集は「ひとかけらの骨も残さなかった」子どもの死を伝える。
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