夏の風物詩・鹿島流しを訪ねる(1)多彩な人形行事
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根源的なまじない
古来、疫病などの禍はさまざまな悪霊がもたらすものと思われてきた。古代メソポタミアでは「厄」を請け負う像を川に流すことによって悪霊を祓ったという(※1)。インド東部のベンガル湾に浮かぶニコバル諸島では、毎年乾季の始まるころに、悪霊を乗せる船を作り村中の家を回った後、海へ流した(※2)。日本各地で発掘された奈良、平安時代の水路や沼などからは「祓(はらえ)」の祭祀に使われたと思われる木製の人形が大量に出土している。悪霊やそれによってもたらされる禍を人形や船に移し、水に流したり焼いたりすることで追い払うという儀礼行為は、民族の違いを超えた根源的なまじないのように思える。

医療や科学が発達した現在でも、こうした悪霊退散のまじないは日本人の信仰の中で色濃く残っている。その一つが厄を背負わせた人形を集落の外へと送り出す「人形送り」と総称される行事だ。東北地方では害虫を追い払う「虫送り」(青森県)、疫病退散を祈願する「病送り」(山形県)などが知られているが、秋田県内では毎年夏に「鹿島流し」「鹿島送り」という行事が各地で行われている。これはカシマニンギョウ(鹿島人形)と呼ばれる武者人形を船に乗せて川や海へ流すことにより、「疫病退散」「五穀豊穣」「地震除け」などを祈願する行事で、17世紀にはすでに久保田城下(現・秋田市)で行われていた記録がある。
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