社説:土崎伝承館10万人 展示充実、幅広い集客を

 秋田市の「土崎みなと歴史伝承館」が、オープンから4年3カ月で入館者10万人を突破した。「土崎神明社祭の曳山(ひきやま)行事(土崎港曳山まつり)」「土崎空襲」「北前船」など土崎地区の歴史や文化を常設展示。土崎にとどまらず本県の歴史、文化を語る上でも貴重な資料が多い。資料、展示などを一層充実させ、より幅広く利用されることを期待したい。

 伝承館は2018年3月、秋田市土崎港西の国道7号沿いに開館した。市が7億6900万円をかけて建設。土崎地区の10市民団体でつくる「土崎みなと街づくり協議会」が指定管理者となり、入館無料で運営する。

 鉄筋コンクリート2階建てで延べ床面積は1393平方メートル。国道側をガラス張りとした曳山展示ホール、土崎空襲の被爆遺構を復元した空襲展示ホールのほか、北前船の模型や秋田街道絵巻のタッチパネルなどの展示室、学習室などを備える。

 入館者は18年度に4万人を数え、19年度は2万5千人。新型コロナウイルスの影響を受けた20、21年度はいずれも1万4千人前後で推移した。21年度はコロナ禍のため修学旅行先を変更した県内小学校の利用が20件ほどあった。こうした利用は今後も増やせるのではないか。

 曳山展示ホールには、16年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された曳山まつりの曳山の実物を展示。20、21日のまつり本番を控え、はやしの練習にも使われている。年間を通じまつりの魅力を伝え、継承する施設としての役割は大きい。

 空襲展示ホールには「日本最後の空襲」の一つである土崎空襲で被害を受けた旧日本石油秋田製油所の倉庫の一部が移築されており、被災小学生の学童服なども展示。語り部による講話や地区内の慰霊碑を巡回する企画なども行われている。

 ロシアによるウクライナ侵攻が長期化の様相を呈する中、戦争の悲惨さや平和の尊さを学べる貴重な施設といえよう。県内学校への働きかけを強め、児童・生徒らの校外学習の機会を増やす努力を期待したい。

 江戸・明治期に日本海を往来した北前船関連の収蔵資料は多くはない。だが曳山まつりは北前船の船乗りが土崎神明社にみこしを寄進したのが始まりとされるなど、北前船は今日の土崎の礎を築いたともいえる。土崎を起点とした舟運を通じ、内陸の雄物川流域の経済や文化に与えた影響も無視できない。

 秋田市で3月に開かれた「北前船寄港地フォーラム」では、北前船文化の世界遺産登録を目指そうとの声もあった。今後は北前船文化の伝承施設としても資料、展示の充実が望まれる。

 ポストコロナの訪日外国人客増加を見据え、展示解説の外国語表記も検討中という。土崎地区の歴史と文化、平和の大切さを学べる施設として広く県内外からの集客を目指してほしい。

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