データ公開「価値」問われる段階 武蔵大・庄司教授インタビュー

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データは「21世紀の原油」とも呼ばれ、どう活用するかが国や地域の今後を左右します。国内では2011年の東日本大震災を機に、官民が保有するデータを課題解決や経済活性化に向けて活用する「オープンデータ」の動きが本格化し、10年余りがたちました。現状と課題、今後目指すべき方向性について、オープンデータに詳しい武蔵大の庄司昌彦教授(45)に聞きました。(聞き手=斉藤賢太郎)

しょうじ・まさひこ 1976年東京都生まれ。オープンデータや行政DXを研究し、各種団体の役員や政府検討会のメンバーを務める。デジタル庁のオープンデータ伝道師。専門は情報社会学。母親が大仙市大曲出身。


―秋田県が公式サイトで公開する「オープンデータカタログ」はPDF・文書ファイルのみが約4割に上るなど、活用が難しいデータが多数を占めます。

「自治体オープンデータはこの約10年間『とにかく情報を公開しましょう』ということで進められてきました。秋田県もカタログを作れるくらいはデータを公開しているということで、第1段階はクリアしています。オープンデータに取り組む都道府県と市区町村が全自治体の約7割まで増え、今後は価値のあるデータの公開、有意義な活用といった点が重要になります。PDFや印刷用のExcelはデータの質の部分で課題があり、秋田県もどこかのタイミングで態勢を見直すべきでしょう」

―オープンデータに取り組む地域が増える一方、内閣官房の自治体向けアンケートでは「人的リソース不足」と「効果・メリットが不明確」という2つの課題認識が浮かび上がっています。どう対処すべきでしょうか。

「最初に建前論から話しますが、オープンデータは民主主義社会を支えるインフラの一つです。2つの課題の背景には費用対効果の考えがあると思いますが、図書館を運営するとか、公式サイトに情報を掲載するとか、議会運営を担うとか、こういった行政事務を費用対効果では考えないでしょう。だから『必要なのでやってください』というのがまず原則です」

「その上で現実問題ですが、実際に自治体の現場を訪問すると、職員の皆さん、さまざまな業務で忙しいのがよく分かります。予算の付け方もシビアになっている。だから後ろ向きな声が出てくるのは当然でもあります。人的リソースの問題については、自動化を目指すべきでしょう。デジタル庁や総務省と一緒に自治体システム標準化の検討を進めていますが、自治体の基幹業務を担うシステムを統一する中で、自動的に統計データを吐き出す機能を持たせれば、オープンデータに関する職員の負担は減らせるはずです」

民間とコミュニケーション取ってますか?


―「効果・メリット」に関しては、活用法の具体的なイメージが重要ですね。

「そうした自治体には『ちゃんと民間とコミュニケーションを取っていますか?』と尋ねたいです。データカタログだけ作って『はい、あとよろしく』では何も起きるはずがない。企業や市民団体と対話してニーズを把握し、データの種類や形式の改善を図らなくてはいけません。地域の大学生や高校生を巻き込んで一緒にデータ活用法を考える取り組みでもいいでしょう。子ども食堂やバリアフリートイレなどは、民間団体と行政が連携し、全国的にオープンデータ化が進んでいます。例えば高齢者施設の空き状況や評価に関する情報をオープンデータ化し、活用が図られれば、住民サービスの向上につながるのではないでしょうか」

「外部に公開するだけでなく、内部で共有して活用する視点も重要です。自分たちが使うためのデータと捉えるとコスト感覚も変わりますし、他部署のデータを見ることで新たなアイデアが生まれるかもしれません。近年重要視されているEBPM(証拠に基づく政策立案)にも有効です」

日本のオープンデータの動きは東日本大震災を機に本格化した(庄司教授作成)

PDFからExcel「もちから米を作るようなもの」


―オープンデータにPDFや印刷用エクセルが多い秋田県庁の現状は「紙文化」の根強さを表しているように思います。

「私はオープンデータと行政DX(デジタルトランスフォーメーション)の両方を研究テーマにしています。この二つはばらばらに扱われることが多いのですが、絡めて進める必要があります。行政のデジタル化は現場で……

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