北斗星(5月14日付)

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 家族という枠からはじき出された人たちが偶然出会い、支え合いながら生きていく。作家・落合恵子さんの小説「偶然の家族」は古びたアパートで暮らす男女7人の日常を描いた作品だ。物語の中心となるのは、男性の同性愛者同士のカップル。シングルマザーとその子どもらも同じ屋根の下で生活する

▼食事を共にしたり、会話を楽しんだり。大家族のように大勢で暮らしつつ、個の生活には踏み入らない。その距離感が住人にとって心地よい。「いろんな家族があるのよ」。同性愛者の一人の言葉が印象に残る

▼1990年の刊行から30年余り。昨年復刊された作品のページをめくりながら、「家族とは何だろう」と考えさせられた

▼法律上、同性カップルの結婚は認められていない。一方、同性カップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ制度」が全国の自治体に広がっている。新しい家族の形といえる

▼県と秋田市が、この制度を導入してから1カ月半となる。パートナーと証明されると、一部の行政サービスを家族と同等に受けられる。申請はまだないという。差別や偏見に対する不安からためらっている人がいるのかもしれない。性的少数者への理解を広げる必要がある

▼あす15日は、変化する家族の姿について考えるために国連が定めた「国際家族デー」。落合さんが作品を通して伝えたかったのは、家族の形はさまざまあっていいということだろう。多様性を認め合う大切さを改めて胸に刻んだ。

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