社説:JAの職業紹介所 長期雇用の実現に期待

 働き手を必要とする農家と求職者を結び付ける無料職業紹介所が、県内のJAで次々と開設されている。園芸作物を中心とする人手不足で、生産維持や規模拡大に支障が出ることが懸念される。JAは農家の実情を理解していることから、こうした取り組みを通じ地域の営農を強力に支援してほしい。

 紹介所は2017年のJAあきた白神(本店能代市)を皮切りにJAこまち(湯沢市)、JA秋田しんせい(由利本荘市)、JA秋田たかのす(北秋田市)、JAあきた湖東(五城目町)、JA秋田ふるさと(横手市)が開設。22年度も3カ所の開設が予定されている。

 少子高齢化の影響で農業分野の人手不足は深刻さを増している。農業法人が規模拡大や新品目導入に二の足を踏む事例があるほか、地縁、血縁を頼って農繁期を乗り切ってきた小規模農家も先行きは不透明だ。

 県や農業団体でつくる県農業労働力サポートセンターなどは19年度、1500経営体を対象にアンケートを実施。その結果、今後の労働力確保が「難しい」との回答が約4割を占めた。園芸メガ団地の整備など、県は収益性の高い園芸作物振興を目指しているが、稲作に比べて機械化が難しく、繁忙期の人手確保が課題だ。

 JAによる職業紹介所の強みは、生産現場と地域の事情を熟知している点だ。これまでは、作業内容が希望に合わず、すぐに辞めてしまう求職者もいたという。だが内容をきめ細かく説明することで、こうしたケースは回避できるだろう。日常的に接しているJAであれば農家が相談しやすい上、人手不足の度合いや時期を詳細に把握できるという利点がある。

 雇用期間は、数日間から数カ月に及ぶものまでさまざまだ。1日単位の求人、求職のマッチングを推進している職業紹介所もある。時間に余裕がある高齢者や副業を探している人など幅広い人材を掘り起こし、農家の希望に応えてほしい。人口減少が著しい本県では、県外への積極的な求人情報の発信も欠かせない。

 農繁期の労働力確保にとどまらず、長期的な雇用の実現にも期待したい。安定的な就労環境を希望し、長期間働きたいという求職者も一定数いるはずだ。こうした人たちに力を発揮してもらうため、栽培品目により繁忙期が異なる農家をリストアップし、働き先を変えながら長く従事できるような環境づくりが求められる。各職業紹介所が連携し、広域的に労働力を融通することも検討すべきだ。

 高齢化に伴う離農は今後も増えるだろう。しかし長期雇用によって技術を身に付け、農業に魅力を感じてもらえれば、新たな担い手が現れる可能性がある。地域農業の持続的発展のため、職業紹介所は人材発掘の場でもあることを強く意識してもらいたい。

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