雪中田植えの伝統、残したい 「自然の恵み」忘れず
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豊作を祈る小正月行事としてかつて広く行われた「雪中田植え」を後世に残そうと、地道な活動を続ける人たちがいる。
秋田県湯沢市の駒形小学校で22日、毎年恒例の雪中田植えが行われた。雪に覆われたグラウンドの一部を田んぼに見立て、全校児童61人が稲わらと豆殻の束を差し込んで豊作を祈った。
地元農家の髙橋義輝さん(76)らの働き掛けで、2004年から学校行事として毎年実施してきた。
冷たい風が吹き付ける中、児童は稲わらと豆がらを合わせた束を1人5~7束ずつ雪に差し込んでいった。6年生12人は往時の姿を再現し、すげがさやみの、わらぐつを身に着けた。最後は全員で手を合わせ、豊作を祈った。
かつて、雪中田植えは県内各地で広く行われていた。
江戸期の紀行家菅江真澄が1810年ごろに現在の五城目町などを訪ねた際に残したとされる日記には、当時の雪中田植えの様子が絵入りで描かれている。

1989年3月5日付の秋田魁新報は、増田町(現横手市)で雪中田植えを続ける農家野田武治郎さん(当時72)へのインタビューを掲載。記事の中で野田さんは、戦前は「みんなやっておった」という雪中田植えが、昭和30年代以降途絶え、地元では自分だけだと説明。雪中田植えが行われなくなった時期は、農薬や化学肥料により病害虫の発生を抑え、一定の収量を安定して確保できるようになったころに当たるとしながら、「作物はやっぱり自然の恵みであることに代わりはない」「お日さま、土、水が大事なものであることを忘れてしまってはいけません」と訴えている。
野田武治郎さんのインタビュー記事はこちら