北斗星(11月28日付)

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 夏には一面にハスの花や葉が茂り、脇の歩道まであふれ出してきそうなほどだった。今はハスは枯れて刈り取られ、静かな水面が周囲の風景を映し出す。秋田市の千秋公園・大手門の堀だ

▼江戸時代半ばに西洋画法を取り入れた「秋田蘭画」で知られる小田野直武は、ハスを描いた作品や写生を残している。秋田藩士だったから堀のハスかと思いたくなるが、そうではない。江戸滞在中にハスの名所・不忍池で写生をしたらしい

▼だが、代表作の重要文化財「不忍池図」にはハスは描かれていない。今の時期の大手門の堀同様、水面が広がるだけ。前景に鉢植えのキンセンカやシャクヤクなど春、夏、秋の花が描かれ、ハスのない池は冬を表すという解釈もなされている

▼秋田蘭画の作家たちは鎖国の時代に西洋文化の刺激を受け、独自の世界を切り開いた。現代の県民も見習いたい創造力だ。堀のそばの旧県民会館跡地に新たなハスが花開こうとしている。来年6月開館に向け建設中の県と市の新文化施設「あきた芸術劇場」だ

▼愛称は「ミルハス」。フランス語の「千」を意味する「ミル」と千秋公園のハスを合わせた。開館記念式典では「大いなる秋田」が演奏され、9月のグランドオープンではオーケストラとピアノの記念コンサートを開く方向という

▼約2千席と800席の二つのホールを備える。地上6階で、建設中でも旧会館よりはるかに大きい印象。ここを舞台にどんな文化が生まれるか今から楽しみだ。

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