木村伊兵衛回顧展(5)秋田の農村 風土に魅せられ20年

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 木村は本県の農村を撮影した作品も数多く残している。1952年の県総合美術展覧会(現在の県展)で、写真部門の審査員に招かれたことがきっかけだ。土地に根差し生活する人々や風景に魅せられた木村は、地元の写真家たちと親交を結びながら、秋田とのつながりを深めていった。撮影は足かけ20年、計21回に及んだ。

添い寝する母と子、大曲、秋田、1959年(C)Naoko Kimura

 秋田に通い始めた頃の木村の作風を「風俗的であって、意見がない」とする声もあったが、本人は当時、「体当(あた)りで人間を描き出すことの技術が完成すれば、みる人に、共通の悩みや、問題を訴える力が強く出せる」と語っている。こだわりを貫き、試行錯誤した場が秋田だった。

 写真の母親は、仕事の合間に子どもを寝かしつけているところだろうか。少し疲れがにじんでいるように見える。農作業に家事、育児と多忙を極める農村の女性を正面から捉えた一枚だ。

 「私の写真は、みんなの生活の延長線上にあるもの」と語った木村。作品から、日常に対して愛情のあるまなざしを感じるのである。

 〈終わり〉

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生誕120年 木村伊兵衛回顧展

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