木村伊兵衛回顧展(3)ポートレート 被写体の自然さ宿す

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 木村がプロの写真家として一躍脚光を浴びるきっかけとなったのは、1933年の個展「ライカによる文芸家肖像写真展」に出品したポートレートである。持ち前のスナップショットの技を生かし、小型カメラで撮った肖像写真は、「人柄や自然な表情を写し出している」と高い評価を得た。木村はその後、戦前戦後を通じて多くのポートレートを残していく。

永井荷風、浅草仲見世、東京、1954年(C)Naoko Kimura

 写真は、作家の永井荷風(1879~1959年)が、自宅から浅草に出掛けるところを写した一枚。帽子をかぶり、傘とかばんを手にした背広姿の永井がゆったりとたたずみ、にぎにぎしい仲見世を散策している。

 永井は浅草に深い愛着を持っていたことで知られる。木村は、日常の風景を写しつつ、そこに溶け込む永井の個性も一こまの中に収めている。

 「被写人物の日常生活の自然さを尊重して撮影する事を、私の人物写真に対する信念としている」と語った木村。肖像写真においても、まなざしは日常の部分に向いていた。

写真展の詳細はこちら
生誕120年 木村伊兵衛回顧展

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