北斗星(5月11日付)

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 リンゴの花が見たくて横手市平鹿町の果樹園に車を走らせた。肌寒い青空の下、白い花をいっぱいに咲かせ、枝葉を勢いよく広げている。大型連休明けごろ満開になった

▼わずかに残る淡いピンクのつぼみに思わず見入ってしまう。冷たい風がやむとブーンと羽音が聞こえ始めた。ミツバチが数匹、花と花をせわしなく移動する。地面は一面、クローバーに覆われ、足元はふかふかだ

▼大雪被害に遭ったとはとても思えない。だが傷痕はいくつもある。折れた枝を元に戻して再生するためコの字形のくぎを打ち込んだり、ドリルで開けた穴にボルトを通し固定したりしている。付け根の直径約20センチ、長さ5メートルほどの枝が折れ、樹皮が大きく剥がれたのもあった。周辺の園でも被害が出ていた

▼積雪は約2メートルにもなった。果樹園を営む60代の農家が言う。「枝を守るために何度も雪寄せに来たが、すぐ降り積もった。ただただ無力感に襲われた」。でも今、白い花を見て思う。「木も自分も頑張った」

▼来月いっぱいの終了を目指して花や小さな実を妻と摘む。残したごく一部が大きな実になる。一つずつ、手で取るところを見せてもらった。我慢強さを求められる地道な作業だ。「長い年月をかけて木と付き合い、自分の子供のように育てるのがリンゴ作り」と語る

▼近くの直売所でリンゴを買った。きっと「子供のように」大切に育てられたのだろう。この1個には農家の長年の努力と自然の力がぎゅっと詰まっている。

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