時代を語る・中村征夫(31)優れた危機管理能力
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10年ほど前、沖縄・慶良間(けらま)諸島の海でカニの思いがけない行動を目にした。深さ5~6メートルで海底は真っ白な砂地だった。足元にある頭大の石を何げなく持ち上げたら、小指の爪ぐらいの小さなカニが僕の手のひらにぽろっと落ちた。そして手から砂地へと落ちていった。
次の瞬間、3匹のベラがばっと寄ってきたんだ。「あっ、食われた」と思った。でもカニはあおむけのままぴたっと動きを止めて、3匹のベラはぐるぐる回っているだけ。絶体絶命なのに食われまいとじっと動かないカニと、離れたり寄ったりして食い付けずにいるベラ。その根比べが何十分も続いていた。