概要

文学賞の歩み

 1983(昭和58)年に直木賞作家の渡辺喜恵子さん(旧鷹巣町出身、97年死去)が「秋田の文学振興に役立ててほしい」と1千万円を秋田魁新報社に寄託したのが創設のきっかけでした。秋田魁新報社は翌84(昭和59)年、創刊110年を記念して1千万円を拠出、計2千万円で基金を設立して文学賞を創設しました。趣旨は「広く全国から新人作家を発掘し、秋田県内の文学創作活動の振興、ひいては芸術文化の向上に一助とする」でした。

 その後、秋田魁新報社は基金に1千万円を追加(基金総額3千万円)して財団法人「さきがけ文学賞渡辺喜恵子基金」を設立(85年)。2012(平成24)年4月に公益財団法人に移行しています。文学賞の公募は84年の第1回以来、2018年で第35回を迎えました。

故・渡辺喜恵子さんの遺志

 「秋田の作家が狭いサークルの中で自足することなく、全国の仲間と競った結果として受賞することに意義がある。身近に文学賞があることが刺激になって創作に挑む人たちが輩出する。そのことが大事で、長い目で見れば、それが秋田の文学振興になる」以上の理念をもとに、創立当初から全国を対象に募集しました。

選考委員

 創設時は渡辺喜恵子さんが本県ゆかりの高井有一さん(芥川賞作家)、野口達二さん(長谷川伸賞の劇作家)に協力を要請。渡辺さんを含む3人が当初の選考委員としてスタートしました。

 現在は西木正明さん(直木賞)、高橋千劔破さん、諸田玲子さんの3人が務めています。

西木正明(第9回~)
作家。1940年~。仙北市出身。「オホーツク諜報船」日本ノンフィクション賞新人賞、「凍れる瞳」「端島の女」で直木賞。「夢幻の山旅」新田次郎文学賞。
高橋千劔破(第33回~)
作家・文芸評論家。1943年~。東京都出身。人物往来社取締役編集局長など歴任。「花鳥風月の日本史」尾崎秀樹記念・大衆文学研究賞、「名山の日本史」など著書多数。
諸田玲子(第35回~)
作家。1954年~。静岡市出身。「其の一日」吉川英治文学新人賞、「奸婦にあらず」新田次郎文学賞、「四十八人目の忠臣」歴史時代作家クラブ賞。「森家の討ち入り」ほか作品多数。

 歴代の選考委員は以下の方々です。

渡辺喜恵子(第1回~第8回、第10回)
作家。1914~1997年。「馬渕川」で直木賞。幼少期を過ごした鷹巣を舞台にした「みちのく子供風土記」や「原生花園」「啄木の妻」など。
野口達二(第1回~第15回)
劇作家。1928~1999年。秋田市出身。新歌舞伎創作などで長谷川伸賞。戯曲「若き日の清盛」大谷竹次郎賞。「野口達二戯曲撰」「秋田の伝説」など。
北原亞以子(第17回~第26回、第28回、第29回)
作家。1938~2013年。東京都出身。「深川澪通り木戸番小屋」泉鏡花文学賞、「恋忘れ草」で直木賞。ほかに人気シリーズ「慶次郎縁側日記」など。
高井有一(第1回~第32回)
作家。1932年~2016年。仙北市出身。「北の河」で芥川賞。「夢の碑」芸術選奨文部大臣賞、「この国の空」谷崎潤一郎賞、「高らかな挽歌」大佛次郎賞、「時の潮」野間文芸賞。
森絵都(第30回~34回)
作家。1968年~。東京都出身。「リズム」講談社児童文学新人賞、椋鳩十児童文学賞。「つきのふね」野間児童文芸賞、「風に舞いあがるビニールシート」で直木賞。

入賞

正賞ブロンズ像の写真
入選(最高賞)(1編)
正賞・ブロンズ像
賞金50万円
副賞(協賛のANAから国内1路線の往復ペア航空券)
選奨(佳作)(1~2編)
賞金5万円
副賞(協賛のANAから国内1区間の往復ペア航空券)
正賞ブロンズ像の作者
 秋田市生まれの彫刻家・工藤たけしさん(多摩美大名誉教授、二科会理事)に製作を依頼、文学賞創設当初から正賞として授与しています。作品名は「春のリズム」。

授賞式

 毎年11月に秋田市のホテルで開催しています。

応募状況

 応募数は例年250編前後です。国内ばかりでなく海外からも応募があり、「さきがけ文学賞」が広く知られていることを示しています。